認知症の予防にコーヒーが効果的?理由と飲み方を解説
2025年06月05日
2025年に発表された国立がん研究センターの論文で、コーヒーが中年期以降の認知機能に関わっている可能性が示されました。研究では1日1杯以上のコーヒーを飲む53~66歳の 方で、約20年後の認知機能低下リスクが下がったとしています1)。
本記事では認知症とコーヒーの関係について、研究結果をもとに詳しく解説します。
なかには「コーヒーの苦みがあまり好きではない」という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方におすすめの飲み方についても紹介します。
コーヒーをさらに楽しむためのヒントとして、参考になれば幸いです。
目次
習慣的なコーヒーが、中年期以降の認知機能低下予防に効果的な可能性
2025年1月に発表された論文で、1日1杯以上のコーヒーが中年期以降の認知機能低下リスクを減らす可能性があると報告されました。
この論文では、生活習慣に関するアンケートと認知機能評価の結果をもとに、コーヒーを飲む習慣と認知機能低下の関係を調査しています。
調査の結果、コーヒーを1日1杯以上飲む53~66歳の方では、1杯未満の方よりも約20年後 の認知機能障害リスクが46%低下していることが分かりました1)。
また2022年にも、コーヒーの摂取量が多いほど認知症の発生率が低下したと報告されています2)。
コーヒーを飲む習慣が認知症予防につながる可能性に、注目が集まっています。
コーヒーによる生活習慣病の予防が、認知症予防にもつながる可能性
コーヒーには生活習慣病を予防する効果も期待されています。糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は血管性認知症との関わりが大きいとされてきましたが、近年アルツハイマー型認知症のリスクも高めると報告されました3)。
2020年の論文では、コーヒーを飲む習慣が2型糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を予防する可能性が示されています4)。
コーヒーによる生活習慣病予防が、認知症予防にもつながるのではないかと期待されています。
認知症予防効果が期待できるコーヒーの成分:カフェイン
コーヒーに含まれる成分であるカフェインには、認知症予防効果が期待されています5)。カフェインはコーヒー以外に緑茶やチョコレート、エナジードリンクに含まれる、神経興奮作用がある成分です。
2020年の論文ではカフェインを含むコーヒーが、認知症の一種であるアルツハイマー型認知症の予防になる可能性を示しています5)。
認知症予防効果が期待できるコーヒーの成分:クロロゲン酸
コーヒーの成分であるクロロゲン酸にも、認知機能の低下を予防する効果が期待されています6)。
クロロゲン酸はポリフェノールの一種であり、脱カフェイン処理をしたコーヒーに多く含まれる成分です。認知機能以外にも抗肥満作用や、血圧調整効果が報告されています6)。
カフェインレスコーヒーでも、クロロゲン酸による認知症リスクの低下が期待されます。
1杯のコーヒーから効果が期待できる
認知機能低下リスクを軽減するためのコーヒーの摂取量は、各報告によって意見が分かれています。
2025年の論文では1日1杯以上のコーヒーが、高齢の方の認知機能低下リスクを下げる可能性があると報告されており、1杯からでも効果が期待できることが分かりました1)。
ただし、これはあくまでも習慣的に摂取している人への調査結果です。一時的に多く飲んでも、より効果が出るわけではないと考えられています。米国食品医薬品局(FDA)は、健康な大人であれば4~5カップ程度(カフェインとして1日400mg)までを推奨しています7)。
コーヒーを飲んでいない方は、まずは1日1杯から始めてみましょう。
コーヒーは寝る4時間前からは避けて、食後に飲もう
コーヒーに含まれるカフェインには覚醒作用があり、寝る前にコーヒーを飲むと寝つきが悪くなる可能性があります。高校生を対象にした2021年のカフェインと睡眠に関する研究は、寝る直前、2時間前、 4時間前にコーヒーを飲むと睡眠に影響したと報告しています8)。
また、空腹時のコーヒーは胃の負担になりかねません。カフェインには胃酸の分泌を促進して、胃の粘膜を刺激する作用があります9)。そのためカフェインを含むコーヒーを飲むのは食後にして、寝る4時間前からは避けるのがよいでしょう。ただし、個人差やその日の体調等によってコーヒーに対する感受性が異なる可能性がありますので、注意してください。
ブラックコーヒーが苦手な方へ、楽しみ方のアイデア
生活習慣病予防のためにも、コーヒーは砂糖やミルクを入れずブラックで飲みましょう。なかには「苦いコーヒーはあまり好きではない」という方もおられます。そんな方に、コーヒーをそのまま楽しむためのアイデアを3つ、紹介します。
- 風味が甘めなフレーバーコーヒー(バニラ、ナッツなどの香り成分を加えたもの)から試してみる
- コーヒー豆の種類を変えてみる
- 浅煎りのアメリカンコーヒーから試してみる
これらはコーヒーの苦みを抑え、より飲みやすくする工夫です。無理せず少量から、コーヒーを楽しみましょう。
適量のコーヒーで、楽しみながら認知症予防を
コーヒーにはカフェインやクロロゲン酸が含まれ、認知機能の低下を防ぐ効果が期待されています。生活習慣病の予防効果があるとも報告されており、あなたの生活にコーヒーを添えることが、認知症の予防につながるかもしれません。
参考文献
- Koreki A. et al. A longitudinal cohort study demonstrating the beneficial effect of moderate consumption of green tea and coffee on the prevention of dementia: The JPHC Saku Mental Health Study. J Alzheimers Dis. 2025;103:519-527
- Matsushita N.et al. Association of coffee, green tea, and caffeine with the risk of dementia in older Japanese people. J Am Geriatr Soc. 2021;69:3529-3544
- 羽生 春夫. 生活習慣病と認知症. 日老医誌. 2013. 50. 727-733
- 田村 悦臣. コーヒーの習慣的喫飲による生活習慣病予防効果の分子基盤. YAKUGAKU ZASSHI. 2020;140:1351-1363
- 栗原 久. コーヒー/カフェイン摂取と日常生活 - カフェインと神経変性疾患リスクの評価 - . 東京福祉大学・大学院紀要(Bulletin of Tokyo University and Grahttps://3) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_50_6_727.pdfduate School of Social Welfare). 2017;8:3-13
- 高妻 和哉 他 健常成人に対するコーヒー豆由来クロロゲン酸含有食品の過剰摂取時の安全性評価(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験). 健康・栄養食品研究. 2021;18:1-8
- 農林水産省. カフェインの過剰摂取について 2024年5月 29日
- 星野 未来 他 カフェインが及ぼす睡眠への影響. 霊長類研究 Supplement. 日本霊長類学会大会. 2021.
- 古田賢司 他 上部消化管疾患の栄養療法. 日消誌. 2007;104:1698―1706