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認知症予防コラム

認知症のイメージを変える?「認知症基本法」と「新しい認知症観」

2025年04月04日

「認知症」と聞くと、介護が必要な人というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。令和6年(2024年)1月1日に施行された「認知症基本法」はこれまでの認知症に対する考え方を変える内容となっています。本コラムでは「認知症基本法」の概要や「新しい認知症観」、社会全体が目指すべき「共生社会」について解説します。

 2024年施行「認知症基本法」とは

令和5(2023)年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」、通称「認知症基本法」が成立し、令和6年(2024年)1月1日 に施行されました1)

2022年~2023年の調査によると、2022年の認知症および軽度認知障害(MCI)をあわせた有病率は27.8%(認知症12.3%、MCI 15.5%)、患者数は1001万7千人(認知症 443万2千人、MCI 558万5千人)と推計されています2)

2022年の有病率が今後も一定の場合、2050年には有病率31.3%(認知症15.1%、MCI 16.2%)、患者数は1219万8千人(認知症 588万6千人、MCI 631万2千人)になると推計され、さらに増加する見込みです2)

 

こうした認知症者が増えている現状を踏まえ、以下のような目的や基本理念のもと、定められた法律です3)

・認知症の人が尊厳を保ち、希望を持って暮らせるようにする

・認知症に関する施策の基本的な考え方や、国・自治体の責任、推進計画などを定める

・認知症の人を含むすべての国民が互いに尊重し、支え合いながら共に生きる「共生社会」を実現する

 

「共生」という言葉にもあるように、認知症の人は介護や支援が必要な「支えられる存在」ではなく「共に生きる存在」であるという点がこれまでの認知症の捉え方、考え方を大きく転換させる点だと言えるでしょう。

「新しい認知症観」とは?これまでとの違い

認知症基本法では基本計画において示されているのが「新しい認知症観」です。「新しい認知症観」について説明し、認知症の人主体の共生社会に向けた「本人ミーティング」の取り組みを紹介します。

 

認知症の人を主体に考える「新しい認知症観」

これまでの認知症観は「認知症になるとできることがなくなる」「介護を受けないと生活を続けられない」といったものでした。「新しい認知症観」とは「認知症になってもやりたいことやできることはあり、住み慣れた地域で仲間などとつながりながら、希望をもって自分らしく暮らし続けられる」という考え方です。

認知症の人自身がどう生活したいかを主体とした考え方で、認知症の人自身が意思を持って地域とつながり、希望を持って暮らせる社会をつくるために、社会全体が持つべき重要な視点です。

 

本人ミーティング

認知症の人を主体とした共生社会をつくり上げていくための取り組みとして、「本人ミーティング」が実施されています。

「本人ミーティング」とは、認知症の人同士が集まって自らの体験や希望などを話し、自分たちがより良く暮らしていくための意見などを地域に伝える集まりです。自治体や地域包括支援センター、社会福祉協議会、地域の医療機関や介護施設、認知症当事者支援団体などで開催されています。

 

本人ミーティングは、次の目的のために行われます。

・認知症の人が率直に思っていることを言える場を設ける

・認知症の人同士が集まり、お互いの気持ちや意見を言い、聞くことで元気になる

・認知症の人自身が必要としていることを地域と共有することで認知症の人も住みやすい街づくりに活かせる

 

こうした取り組みを広げるために、厚生労働省では具体的な「本人ミーティング」の具体的な進め方がわかるガイドブックも掲載されています。

参照:厚生労働省 本人ミーティング開催ガイドブック4)

https://www.mhlw.go.jp/content/001242220.pdf

認知症基本法がめざす共生社会

共生社会をつくるためには認知症の人自身が思いを言葉にできる場を設け、その思いを受けて一緒に考えていく地域の体制が必要です。厚生労働省や地域のほか、企業にも取り組みが広がっています。

 

認知症の人が地域や社会とつながるための取り組みとして次のような活動が行われています。

・希望大使:認知症自身の発信の機会を増やすために、厚生労働省に任命された7人の認知症の人が「希望大使」として認知症の普及啓発活動や国際的な活動に取り組んでいる

・認知症カフェ:認知症の本人や家族、地域住民が専門家と気軽に話し合え、お互いを知り、気軽に情報交換できる場

・ピアサポート活動:認知症の人自身による認知症の人の相談支援で、認知症の人の社会参加の機会にもなっている

 

企業の取り組みとしては、認知症の人が開発に参画することで、本当のニーズに合った製品やサービスを共創して生み出すオレンジイノベーション・プロジェクト5)が進められています。誰もが過ごしやすい共生社会の実現に向けて、企業は新たなソリューション創出の仕組みづくりを目指しています。

 

誰もが「新しい認知症観」を持つために

2022年の認知症と経度認知症(MCI)をあわせた有病率は約3割であり、認知症に関わる症状がある人は約3人に1人の割合となっています。認知症は誰に起こってもおかしくはありません。

共生社会の実現には認知症の人自身の思いや希望を尊重し、認知症本人中心の生活を支える姿勢が社会全体に求められます。そのためには、認知症について正しい知識を身につけ、認知症の人の声を聴き、認知症の人が安心して声を挙げられる環境をつくっていくことが重要です。

 

参考文献

1)e-Govポータル共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和五年法律第六十五号)

https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000065

2)内閣官房 認知症施策推進関係者会議(第2回)議事次第 資料9 二宮氏提出資料

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ninchisho_kankeisha/dai2/siryou9.pdf

3)厚生労働省 共生社会の実現を推進するための認知症基本法の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/001212852.pdf

4)厚生労働省 本人ミーティング開催ガイドブック

https://www.mhlw.go.jp/content/001242220.pdf

5)経済産業省 認知症政策

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/dementia/dementia.html