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認知症予防コラム

会話・日記アプリやオンラインコミュニティが新たな認知症予防の手段に?

2025年03月14日

認知症予防には、会話や交流などの機会を持つことや日記を書くことなどが効果的とされています。近年ではコミュニケーションを図れるAI会話アプリやオンラインの環境を活用したコミュニティ、日記アプリなどが注目を集めています。本記事では、会話AI、オンラインコミュニティ、日記アプリの情報や活用方法、メリットなどを解説します。

 

 

認知症予防として会話AIを活用する

「1日1回以上の交流がある高齢女性は、週1回未満の女性に比べて認知症リスクがほぼ半減することが報告されています。交流には、家族や友人と直接会うこと、電話、または手紙のやり取りが含まれます。」(Crooks et al.2008)1)

 

平成30年版高齢社会白書によると、高齢者の単身世帯では会話の頻度が少ないことが明らかです。特に「ほとんど毎日」 会話をすると回答した割合は、単身世帯では54.3% にとどまり、夫婦のみ世帯や二世代、三世代世帯の90%以上に比べて著しく低い結果となっています2)

 

家族や友人との会話の頻度が「週1回未満」の世帯は二世代、三世代では2.2~4.3%に比べ、単独世帯では11.6%にのぼります2)

 

65歳以上の一人暮らしの割合は年々増加しており、令和2年は男性15.0%、女性22.1% となりました。今後も増加傾向は続き、令和32年には男性26.1%、女性29.3% になると推計されています3)

 

このように、今後も単身世帯で会話の機会が少ない高齢者の増加傾向が続くと予測されている中、認知症の非薬物療法のひとつである回想法を取り入れた会話AIアプリが注目されています。

 

高齢化が進行している横須賀市ではAI会話アプリを活用した認知症予防の取り組みとして、次のような発表がありました。

「音声会話型生成AIを活用した認知症予防会話サービス」

の開発を開始するとされています。(出典:横須賀市公式ホームページ4)

 

今後、AI会話アプリが高齢者にとっての認知症予防のひとつの手段となることが期待されます。

 

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高齢者向けオンラインコミュニティで交流を増やす

オンラインで、参加者同士のコミュニケーションをとったり、運動や頭を使う課題が提供されたりする高齢者向けのオンラインコミュニティサービスが増えています。

 

第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和3年)によると、友人・知人との交流では「物をあげたりもらったりする48.7%」「外でちょっと立ち話をする程度64.7%」に対して、「お茶や食事を一緒にする14.2%」「趣味をともにする11.7%」「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする家事やちょっとした用事をしたり、してもらったりする20.0%」「病気の時に助け合う5.0%」であり5)、高齢者の交流は表面的なやり取りが多く、深い対話や活動、趣味を楽しむ機会が限られているのかもしれません。

 

オンラインコミュニティでは、場所や移動の制約がなく、知らない人ともコミュニケーションをとれる環境のため、新しいつながりが生まれやすく、社会的な参加の機会も広がります。また、共通の趣味や活動を一緒に楽しむことは、孤立感の解消や脳の刺激につながりやすいと考えられます。

 

特に、外出の機会が少なく家に閉じこもりがちな高齢者にとって、自宅に居ながら人とのつながりをつくれるオンラインコミュニティは、会話や交流、参加を増やす機会として役立つでしょう。

 

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日記アプリで日記習慣をつける

日記を書くことは「思い出す」「思い出したことを言語化する」といった要素に認知機能を用いるため、脳の活性化につながると考えられています。従来では日記帳やノートに書いて残すことが一般的でしたが、最近ではデバイスを活用した日記アプリも多く登場しています。

 

それぞれのアプリで特徴や機能は異なりますが、主なものは次のとおりです。

・スマートフォンで打ち込むと日記の内容に関してコメントを返してくれる

・毎日決まった時間にリマインドがある

・過去の出来事をまとめてくれる

・50文字以内などの文字数制限があるタイプもみられる

 

リマインド機能があり、スマートフォンで手軽に打ち込める日記アプリは、習慣化につながりやすく、継続しやすいメリットがあるでしょう。また、過去の自分の行動や感情を客観的に振り返ることで、自分自身を客観的に認知する能力であるメタ認知を高める効果も期待できます。

 

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まとめ: 場面に応じたAI活用で幅広い対象者に対する認知症予防に

AIを活用した会話AIアプリ、オンラインコミュニティ、日記アプリ は、認知症予防の新たな手段として期待されます。会話AI は 回想法 を取り入れて 記憶の活性化を促し、オンラインコミュニティは会話や交流、参加機会を増やして社会的なつながりを広げます。日記アプリは思い出す、言語化するなどの認知機能を使用し、メタ認知を高める可能性もあるでしょう。

 

対面での直接的な交流は相手の反応やその場の雰囲気など、より多くの情報や刺激が得られます。しかし、外出や移動が制限される高齢者にとっては、AIやオンラインの活用は孤立を防ぎ、コミュニケーションや社会参加を続ける機会を支援する手段となり得るのではないでしょうか。

 

場面や条件によって、オフラインとともにAIやオンラインを併用することは、より多くの高齢者の交流や社会的な参加を促すきっかけになると期待されます。

 

【参考文献】

1)Valerie C Crooks et al. Social Network, Cognitive Function, and Dementia Incidence Among Elderly Women. Am J Public Health. 2008;98(7):1221–1227

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2424087/#sec6

2)平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)平成29年度.高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況第3節<視点2>先端技術等で拓く高齢社会の健康. 1健康と日常生活(PDF形式:858KB)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/pdf/1s3s_02_01.pdf

3)令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版). 令和5年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況. 第1章高齢化の状況.第1節高齢化の状況. 3 家族と世帯(PDF形式:933KB)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s1s_03.pdf

4)横須賀市公式ホームページ総合案内 産学官連携でサービス開発 音声会話型生成AIを活用した認知症予防会話サービス(2024年8月)

https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0835/nagekomi/20240807_yokosuka_starley.html

5)第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(全体版)令和2年度 第2章 調査結果の概要 7.友人・知人との交流・社会活動、情報収集

https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r02/zentai/pdf/2_7.pdf