老化の原因は「酸化」から
2021年03月15日
目次
本来身体を守る活性酸素、増えすぎると「酸化」の原因に
私たちは呼吸をする際に空気中の酸素を取り込んでいます。体内に取り込まれた酸素を使ってエネルギーを作りますが、このとき副産物として活性酸素が生じます。また体内に取り込まれた酸素のうち、エネルギーに使われない酸素の一部も活性酸素に変化します。活性酸素は通常、細菌やウイルスの感染防御を担い、私たちの身体を守っています。
ところが、活性酸素が増えすぎてしまうと、その強い酸化力により正常な細胞や遺伝子も酸化させてしまいます。鉄がさびるように細胞を酸化させ、酸化による劣化から老化が始まります。
活性酸素を増やす要因
活性酸素は体内で生じる以外に、環境による外的要因によっても生じます。
要因 | 作用 |
---|---|
紫外線 | 紫外線により皮膚細胞で活性酸素が発生し、シミやしわにつながる |
ストレス | 苛立ち、緊張、不安によって血行障害がおき、酸素の循環が滞ると活性酸素が発生する |
アルコール | 過剰なアルコール摂取により、アルコール分解が追い付かず、活性酸素が発生する |
タバコ | タバコとその煙には活性酸素が含まれている |
排気ガス | 排気ガスには活性酸素が含まれている |
過激な運動 | アスリートのような激しい運動をすると酸素摂取量が増え、活性酸素が増える |
抗酸化作用が身体を「酸化」から守ってくれるが…
増えた活性酸素は、私たちの身体に備わっている抗酸化作用が酸化を防ぎます。抗酸化作用として働くのは酵素です。酵素は活性酸素を作らせないようにしたり、活性酸素を消去したり、活性酸素によって傷つけられた細胞を修復する働きをします。しかし、体内で合成される酵素は、20代をピークに合成されにくくなっていきます。
“酸化ストレス” が引き起こす事態
いろいろな要因によって活性酸素が増え、抗酸化作用が追い付かない状態を酸化ストレスといいます。
酸化ストレスによって細胞の酸化がおこると、生理機能が低下し、疾病の発症や進行、老化の促進につながります。例えば、DNAや遺伝子が酸化されるとガンの発生原因になり、血管内皮細胞が酸化されると動脈硬化が始まります。脳の細胞が酸化されると、脳神経細胞の消失やアミロイドβの蓄積に関連し、認知症に向かいます。
「酸化」を抑える2つの方法
老化や疾病につながる酸化を抑えるためには、2つの方法があります。活性酸素の量を減らすことと、抗酸化作用を高めることです。
活性酸素が発生する外的要因をできるだけ排除する
※酸化のもととなる活性酸素を増やす生活習慣を見直すことが大切です
- 紫外線 を浴びないように、日焼け止めや日傘を利用する。
- ストレス をためないように、解消できるケアを取り入れる。
- アルコール は過度に摂取しない。
- タバコ は本数を減らすか、禁煙する。
- 排気ガス の少ないところに身を置く。
- 過剰な運動 は控え、軽めの運動で酵素の働きを高める。
抗酸化作用のある食品を摂取する
※体内で酵素の合成が減少しても、抗酸化作用のある食品を摂取することで酸化を防ぎます
栄養素 | 効能 | 食物 |
---|---|---|
ビタミンC 《加熱に弱く水に溶けやすいため、生で食べるか、熱に接する時間を短くしたり、スープにすると良い。排泄されやすいため、こまめに摂取すると良い。》 | 抗酸化力が高く、コラーゲンの生成に必須 | アセロラ 赤・黄パプリカ ブロッコリー ゴーヤ キウイ など |
ビタミンE 《熱に強く光に弱い性質のため、光に当てないように保管すると良い。油脂、タンパク質と一緒に食べると吸収が良い。》 | 抗酸化力が高く、細胞の酸化を防ぐ | ひまわり油 べにばな油 アーモンド 落花生 うなぎ など |
βカロテン 《油脂と食べると吸収が良くなる。》 | 抗酸化力が高く、免疫を増強します | にんじん ほうれん草 春菊 かぼちゃ 緑黄色野菜 など |
ポリフェノール 《5,000種類以上あるポリフェノールはそれぞれ独自の効能があるが、高い抗酸化力を持つことは共通している。》 | アントシアニン (目の機能回復) | ブルーベリー |
レスベラトロール (アミロイドβ分解促進) | 赤ワイン | |
カテキン (抗ウイルス、抗菌、抗ガン作用) | 緑茶 | |
イソフラボン (更年期症状の緩和) | 大豆 | |
セサミン・セサミノール (LDLコレステロールの生成抑制、二日酔い防止効果) | ごま | |
ケルセチン (ひざ関節痛抑制、筋肉の減少抑制) | 玉ねぎ | |
クルクミン (認知機能低下の抑制、肝機能の回復や強化) | ウコン | |
クロロゲン酸 (脂肪肝の予防効果、糖尿病の予防効果) | コーヒー | |
テアフラビン (血糖値の上昇抑制、インフルエンザ予防効果) | 紅茶 |
「酸化」を抑える習慣が老化予防習慣に
同じ歳の人であっても、若々しい人もいれば、老け込んでいる人もいます。老化には個人差があり、老化を阻止することは可能であるということが分かっています。その老化を大きく左右するのが活性酸素。活性酸素による酸化を抑えることで、老化と疾病を予防することができます。
酸化を抑えることで期待できる一部の例として、シミ・しわなどのアンチエイジング、がんの抑制、動脈硬化の予防、糖尿病や脂質異常症の予防、認知機能低下の予防などがあり、酸化が関連する疾病は他にもあります。
活性酸素をなくし、酸化を抑えることは、認知症だけでなく身体におこるさまざまな老化を予防します。活性酸素を増やさない生活習慣、抗酸化作用のある食品を摂取する心がけで、老化予防習慣につなげましょう。
参考:
- Michael M Dubreuil, et al. Systematic Identification of Regulators of Oxidative Stress Reveals Non-canonical Roles for Peroxisomal Import and the Pentose Phosphate Pathway. Cell Reports 2020 Feb 4;30(5):1417-1433
- 吉川敏一「フリーラジカルの医学」京都府立医学大学雑誌,120(6),381-391,2011-06
- Jun Miyanohara, et al. TRPM2 Channel Aggravates CNS Inflammation and Cognitive Impairment via Activation of Microglia in Chronic Cerebral Hypoperfusion. Journal of Neurosci. 2018 Apr 4;38(14):3520-3533