認知症は遺伝する?親が認知症の場合の発症リスクと予防策を解説
2026年04月10日
家族が認知症になり、自分も認知症になるのではないかと不安を感じる人もいるのではないでしょうか。
多くの認知症は、遺伝的要因だけで発症する病気ではありません。遺伝子はあくまで認知症の発症に関与する要因のひとつです。
また、家族間で認知症が多くみられる場合、遺伝だけでなく、食事や運動など共通の生活習慣が発症リスクに影響している可能性もあります。
この記事では、認知症と遺伝の関係や発症の要因、具体的な予防策を解説します。家族が認知症と診断された方や、自分のリスクが気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
認知症は遺伝する?
認知症の発症には、遺伝以外にも、加齢や生活習慣、生活習慣病、社会的要因など、さまざまな要因が関わっています。
そもそも認知症とは、認知機能の低下によって日常生活に支障が生じている状態の総称です。認知機能低下の主な原因となる病気には、次のようなものがあります1)。
- アルツハイマー病
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
認知症は、原因となる病気によって、発症の仕組みや遺伝との関係がさまざまです。
また、遺伝が関係する場合でも、多くは「必ず発症する」遺伝子ではなく、「発症しやすくなる」リスク遺伝子として影響しています2)。リスク遺伝子を持っていても発症しない人もいれば、持っていなくても発症する人もいます。
アルツハイマー病と遺伝の関係
認知症のなかで最も患者数が多いのはアルツハイマー病で、認知症全体の約6〜7割を占めます3)。アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβやタウタンパク質が蓄積することで神経細胞が失われ、認知機能が低下していく病気です。
多くのアルツハイマー病は、遺伝子が「発症しやすさ」に関与すると考えられています。
代表的なリスク遺伝子として、「APOE(アポイー)」という遺伝子が知られています。この遺伝子には様々の型があり、そのうち「APOEε4(イプシロンフォー)」という型を持っている場合は発症リスクが高まるとされていますが、あくまで認知症のリスクを高める要因のひとつです2)。
なお、アルツハイマー病には、特定の遺伝子変異(APP・PSEN1・PSEN2)が強く関わる「家族性アルツハイマー病」もあります。しかし、これはアルツハイマー病全体の1%未満といわれています2)。
認知症に関わる遺伝以外の要因
認知症の発症には、遺伝だけでなく複数の要因が関わっています。たとえば、家族内で認知症の人が多い場合でも、必ずしも遺伝子だけが原因とは限りません。
共通の食生活や運動習慣、生活環境など、家族で共有されるライフスタイルも、認知症の発症リスクに関与する可能性があります。ここでは、認知症の発症に関わる4つの要因を解説します。
加齢
認知症の発症リスクは、加齢とともに高まります。65歳を過ぎると発症率が上がりはじめ、年齢を重ねるごとにリスクは高まります。2022-2023年の調査(調査対象約7,000人)によれば、年齢ごとの認知症有病率は次の通りです4)。
|
年齢 |
有病率 |
|
65〜69歳 |
1.1% |
|
70〜74歳 |
3.1% |
| 75〜79歳 |
7.1% |
| 80〜84歳 |
16.6% |
|
85〜89歳 |
32.8% |
| 90歳以上 |
50.3% |
75〜79歳では10.4%と、70〜74歳の2倍強になっています。また、85〜89歳になると約3人に1人、90歳以上では約2人に1人が認知症であるという結果でした。
加齢そのものは避けられません。しかし、後述する生活習慣や生活習慣病などは、自分の意思でコントロールしやすい要因です。年齢以外のリスク因子についても正しく理解し、早い段階から対策を始めることが大切です。
生活習慣
運動不足や睡眠不足、喫煙、過度な飲酒などの生活習慣も、認知症の発症リスクに関わることが知られています。生活習慣を整えることで、認知症のリスク低減につながるでしょう。
具体的には、次のような習慣が認知症予防に効果的とされています。
- 有酸素運動:週3回以上のウォーキングなどが、脳血流の改善や神経保護に効果的とされている
- 十分な睡眠:睡眠中に脳内の老廃物(アミロイドβ)が排出される
- 禁煙・節酒:喫煙や過度な飲酒は、脳の健康に悪影響を及ぼす
生活習慣は家族間で同じようになりがちです。家族に認知症の人がいる場合、遺伝子そのものだけでなく、生活習慣も発症リスクに影響する可能性があります。認知症のリスク遺伝子が気になる人は、生活習慣の見直しから始めてみましょう。

生活習慣病
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も、認知症の発症リスクに関わる要因のひとつです。生活習慣病によって血管にダメージが蓄積し、脳への血流が妨げられることで、認知機能の低下につながる可能性があります。
糖尿病と脳卒中は中年期・高齢期を問わず認知症リスクを高めるとされており、中年期の高血圧も認知症になりやすくなることがわかっています5)。
多くの生活習慣病は自覚症状が乏しいため、定期的に健康診断を受け、早期に発見し治療することが大切です。すでに高血圧や糖尿病と診断されている人は、医師の指示のもとで適切な治療を続けることが、認知症予防につながるでしょう。
社会的要因
近年は社会的なつながりの減少や孤立も、認知症のリスク要因のひとつと考えられています。人との会話や交流は脳への刺激となり、認知機能の維持に役立つとされているためです。
たとえば、以下のような状況が社会的孤立のきっかけになりやすいとされています。
- 定年退職による社会的役割の喪失
- 引っ越しや入院などの生活環境の急激な変化
- 難聴による会話の減少
趣味や地域活動に参加したり、家族や友人と定期的に交流したりするなど、日常のなかでつながりを意識的に保つことが、認知症予防の観点からも大切です。
認知症リスクへの対策
認知症の発症リスクを低減するためには、まず生活習慣や生活習慣病、社会的なつながりなど、主な要因に対策しておくことが大切です。
加えて、認知症の前段階であるMCIのリスクを知っておくことも、早期対策に有効です。ここでは、MCIの早期発見の重要性について解説します。
MCI(軽度認知障害)を早期発見する
MCI(軽度認知障害)とは、認知症の一歩手前の状態を指します。記憶力や判断力に軽い低下がみられるものの、日常生活には大きな支障がない段階です。
MCIの人の約半数は5年以内に認知症に移行するといわれています。しかし、MCIの段階から運動などの予防的活動を開始すると、認知症に進行するスピードを遅くできる可能性があります6)。
「最近、以前より物忘れが増えた気がする」「同年齢の人と比べて物忘れがやや多いかもしれない」と感じたら、早めに医師に相談しましょう。早めに対策を取ることで、認知症への進行を遅らせたり、正常な状態に戻ったりできる可能性があります。
まとめ:認知症のリスクを知ることで予防策が立てられる
認知症は、遺伝だけが原因で発症する病気ではありません。加齢や生活習慣、生活習慣病、社会的要因など、さまざまな要因によって発症します。
家族に認知症の人がいると、自分の将来に不安を感じる人もいるでしょう。遺伝的な背景はリスク要因のひとつではありますが、必ず発症するとは限りません。なお、家族と生活習慣が似ている場合は、発症リスクに影響する可能性があります。
認知症を予防するには、以下のような取り組みが有効です。
- 生活習慣を見直す
- 生活習慣病をきちんと管理する
- 社会的なつながりを保つ
さらに、MCIを早期に発見して生活習慣の改善に取り組むことで、認知症の発症リスクを抑えられる可能性があります。
認知症リスクを理解した上で、まずは食事や運動、社会参加など、自分で管理できる対策から取り組んでいきましょう。
引用・参考
2)国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター アルツハイマー病は遺伝する?(2)
4)九州大学 認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに 将来推計に関する研究
5)国立長寿医療研究センター あたまとからだを元気にするMCIハンドブック
6)国立精神・神経医療研究センター 認知症 こころの情報サイト

