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認知症予防コラム

朗報!認知症の有病率が以前の推計より低下傾向に。予防の可能性を探る!

2025年11月25日

日本の総人口(2024年9月15日現在推計)における高齢者(65歳以上)人口は、3625万人で、総人口に占める高齢者の割合は29.3%であることが報告されました。

高齢者人口も高齢者の割合も過去最高とのことです。

今後もこの傾向は進むと考えられます。高齢化の進行は様々な病気の患者数増加につながると思われますが、認知症もその一つで、私たちにとって身近で重要な課題となっています。

しかし、最新の研究から、少し明るい兆しが見えてきました。日本の認知症有病率は、以前の推計と比べて低下傾向にあることが最近の調査結果から示されています。

最新調査で示された認知症有病率の低下

022年から2023年にかけて日本国内の4地域(福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町、島根県海士町)で65歳以上の住民を対象に行われた調査によると、2022年の認知症の有病率(性年齢調整後)は12.3%でした 。

これは、2012年に厚生労働省から報告された認知症有病率15.0%と比較して低い値となっています 。

しかし、認知症とその前段階とされる軽度認知障害(MCI)を合わせた有病率は、2022年の調査で27.8%(MCI 15.5% + 認知症 12.3%)であり、2012年報告の28.0%(MCI 13.0% + 認知症 15.0%)と大きな変化は認められませんでした 。

これは何を意味するのでしょうか? 認知機能の低下が疑われる人々(MCIや認知症)の割合自体は大きく変わっていませんが、認知症と診断される人々の割合が減っているということを意味する結果になります。

認知症有病率が低下した理由は?

有病率が低下した理由として、今回の調査結果の分析から、健康に関する情報や教育の普及による健康意識の変化に加え、認知症のリスク要因とされる高血圧糖尿病脂質異常症などの生活習慣病に対する管理が改善された可能性が指摘されています 。

以下の要因は、私たち自身が行える認知症予防の取り組みのヒントにもなります。

  • 血圧管理の改善: 減塩の推進や降圧薬の普及により、平均血圧は1970年代以降低下傾向にあります 。
  • 脂質異常症の治療普及: 1990年代から高脂血症薬による治療が普及しています 。
  • 糖尿病の治療・管理方法の改善: 2000年代以降低血糖をきたしにくい糖尿病治療が望まれるようになり、それに対応した処方薬の使用が増加しています。
  • 喫煙率の低下: 成人の喫煙率が全体的に減少傾向にあります 。
  • 健康意識の高まり: 栄養や身体活動など、自身の健康活動に「特に心がけていることがある」と回答する高齢者が9割以上に上るという調査結果もあり、健康に関する情報や教育の普及による健康意識の変化が、認知機能低下の進行を抑制している可能性が考えられます 。

これらの改善により、認知機能低下の進行が抑制され、MCIから認知症へ移行する人の割合が低下した可能性が指摘されています 。

このように、全体的な認知機能障害の割合は変わらない一方で、認知症の割合が低下したことは、MCIから認知症へと進行するのを食い止めることができている人が増えた可能性を示唆しています 。これは、脂質異常症などの管理や生活習慣の改善などが、認知症の発症を遅らせたり、予防したりする上で効果を発揮し始めているという、非常にポジティブなメッセージといえるでしょう。

認知症予防は未来の健康投資

この研究結果は、「認知症は必ずなるもの」という悲観的な見方を変え、予防の可能性に光を当てるものといえるでしょう。

日々の生活の中で、以下の点に意識して取り組むことが、認知症予防につながる「未来への健康投資」となります。

  1. 生活習慣病の適切な管理: 高血圧や糖尿病、脂質異常症などは、医師の指導のもとでしっかりと治療・管理しましょう。
  2. 健康的な生活習慣: 喫煙を避け、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。特に中年期から高齢早期の生活習慣が重要とされています 。
  3. 健康意識の維持: 健康に関する情報に触れ、自分の健康に積極的に関心を持つことが、行動変容の第一歩となります 。

認知症の有病率が低下しているという事実は、私たち一人ひとりの努力が実を結んでいる証かもしれません。できることから少しずつ、前向きに認知症予防に取り組み、健やかな老後を目指しませんか。

 

参考資料

統計からみた我が国の高齢者、総務省

認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究